2010年11月25日木曜日

夢を買う農家育種のススメ

新品種コンテスト「ジャパンフラワーセレクション」(財団法人 日本花普及センター)





ご婦人方による交配技術研修(宝くじ共同購入育種の楽しみでもある)







今年も年末ジャンボ宝くじの季節になりました。


庶民の夢。444人が億万長者になれるそうです。


花農家には、宝くじより確率が高く億万長者になれる方法があります。

前々回、日本の育種力が低下していることをお話ししました。

その品種改良、育種です。

花農家のみなさん、種苗会社に頼るのではなく、農家みずから育種、すなわち「農家育種」をしましょう。

農家育種には3つのレベルがあります。

①起業育種、②宝くじ共同購入育種、③たねとり育種です。

①の「起業育種」は「企業育種」ではありません。花づくり農家が、自ら品種改良したオリジナル品種により、大きく飛躍して、その品目では特別な経営になる、すなわち「起業」です。

ラナンキュラスの綾園芸さん(宮崎)、トルコギキョウの中曽根さん(長野)、バラのメルヘンローズさん(大分)、今井さん(広島)、カーネーションの稲垣さん(愛知)、昼神さん(長野)、ストックの黒川さん(千葉)、オキシペタラムの笹岡さん(高知)、吉村さん(長崎)など、全国に大勢の成功者がおられます。

2代目、3代目の若い後継者は、親とは少し方向をかえて、育種に取り組んではいかがでしょうか。

③の「たねとり育種」は、別名「できちゃった育種」です。

農協の直売所や道の駅に出荷しているお年寄りや女性におすすめです。

これらの直売所では、「新鮮」、「安価」、「つくった人の顔がみえる」、がウリです。

高価な新品種のたねや苗を買う必要はありません。

古い品種や100円の絵袋のたねを買い、栽培後には自分でたねをとりましょう。

花の色や外観が少々ちがっていても、直売所では問題にはなりません。自分だけのオリジナル品種になります。

ついでに小菊やナデシコなど、さし芽でふやす種類でもたねを採ってみましょう。必ず、親とはちがう花が咲きます。それらもミックスとして商品になります。気に入った花があればさし芽で増やし、固定することができます。

この方法でたねとりをしていくと、その地域、自分の畑の環境にあった、寒さや暑さ、乾燥や湿害、病気や害虫に強い品種になっていきます。

無欲の勝利、すばらしい新品種が誕生することもあります。まさしく「できちゃった育種」です。

普及員さんや営農指導員さんに助けていただいて、新品種として、国に品種登録をすることもできます。農林水産大臣から立派な登録証がいただけます。

地域で評判になるでしょう。

②の「宝くじ共同購入育種」は、①と③の中間の、普通の花づくり農家の育種です。

これらの農家は、オリジナル品種で差別化をはかりたいが、育種にかける時間、労力がありません。

その夢を叶えるのが「宝くじ共同購入育種」です。

仲間で少しのお金を出し合い宝くじを買い、当たれば賞金を分け合うシステムです。みんなで育種労力とリスクを分かち合うのです。

夢は大きく、リスクは少なく、それなりの実利が期待できます。行政の支援を得ることもできます。

じゃまくさい交配の部分は農業試験場や農協に助けていただくことも可能です。採れたたねをまいて育てるのは農家がもっとも得意な分野です。

農家だけでなく、行政、農協、さらには花屋さん、市場を招き、みんなで夢を語りながら選抜します。

ばらばらになりがちな産地が、夢と実利を共有する育種で、ひとつにまとまることができます。宝くじであり、お祭りでもあります。

育種技術そのものはむつかしいことではありません。

めしべに、おしべから採った花粉をつけてたねを採る、生物に共通の生殖作業です。

ビギナーズラックは育種にもあてはまります。

はじめての交配では、すばらしい品種が、高い確率で誕生します。

もし、はじめての交配で気に入った花が生まれなかったら、育種はあきらめましょう。続けても泥沼にはまるだけです。先祖伝来の財産を失うかもしれません。違う夢にチャレンジしましょう。

農家育種で億万長者になりましょう。
































2010年11月16日火曜日

環境にやさしい花づくりには科学・技術の支援が必要です

写真1 夜、黄色の蛍光灯をつけて夜盗虫(ヨトウムシ)の被害を減らす





写真2 粘着版で害虫をつかまえる



化学農薬の使用量を減らし、排出炭酸ガスを減らす、環境にやさしい花を作り、安心安全な花を提供することは、生産者だけでなく、市場、花屋さん、誰もがめざすところです。
農薬の使用量を減らして、なおかつ花の病気や害虫を減らす、これは簡単なことではありません。
環境にやさしい花だからといって、ダニがついていたり、灰色かび病がでていたのでは誰も買ってくれません。


情熱や熱意、精神力だけで、ダニや病気を退治することはできません。
実現には、科学と技術の裏付けと、勤勉な労働が必要です。
ところが、「作れば売れる時代は終わった」のスローガンが一人歩きをし、モノ作りの原点が忘れられています。「売る技術」優先で、「つくる技術」が軽視されています。
「作れば売れる時代は終わった」の前提は、「どんなに品質が良くても」です。
日本はモノづくりで生きていく国です。モノづくりにゴールはありません。
日々、改善、進歩、向上です。
それにもかかわらず「環境にやさしい」スローガンだけが元気よく、それを実現する「技術と勤勉な労働」が、軽視されています。
ハウス内の湿度、温度、光環境の改善、防虫ネット、天敵、光防除、病気に強い花づくり・・・、科学の支援なしには実現できません。
日本では、農業の研究開発、技術指導は、農協と国、自治体がほぼ独占しています。つまり、税金で運営されていますので、無料でこれらのサービスを受けることができます。
環境にやさしい花づくりの実現は、花農家の身の回りにいる農協や自治体の指導員さんとの連携と栽培履歴の記帳からはじまります。