2010年12月22日水曜日

2010年の新技術

写真1 小ギクの収穫機(奈良県のホームページより)


写真2 立ち枯れ病で枯れないカーネーション「花恋(かれん)ルージュ」(農研機構花き研究所育成)





日本の花の研究者の数は世界一です。

大学に80名、国に40名、都道府県に280名、合計で400名もいます(宇田調べ)。

国民の腹を満たすわけでもない花をこんなに研究している国は日本だけです。

これらの人は農業の分野で花の研究にたずさわる研究者で、造園や植物園関係は含みません。

基礎研究(残念ながら農学にはノーベル賞はありませんが)から、農家がすぐに利用することができる実用的な研究まで、さまざまなレベルの研究が休むことなく、取り組まれています。

それら膨大な研究から、私が独断で選んだ2010年の夢ある新技術を紹介します。

(1)輪ギクの短茎60cmで年5回獲り(農研機構花き研究所、愛知県、愛知県経済連、鹿児島県の共同)

一般に輪ギクの切り花は80~90cmですが、仏花では60cmあれば十分です。

90cmでは年に、最大で2.5回しか収穫できません。

それを60cmの短茎にして、年に5回収穫する技術を開発しました。植えつけてから60日で花を咲かせます。

90cmでは、10a(1,000㎡)あたり10万本の収量ですが、60cmでは20万本収穫できます。



(2)小ギクを機械で一斉収穫(奈良県、香川県、沖縄県、兵庫県、みのる産業の共同)

切り花の生産で、もっとも時間がかかるのは収穫作業です。

花の収穫はハサミで切り取る手作業で、機械化は不可能と考えられていました。

それを奈良県の研究者と農業機械メーカーみのる産業は、小ギクを収穫する機械を開発し、特許をとりました。まず、沖縄のキクで実用化がはじまります。

この機械では、手作業の1/4の時間で収穫ができます。

ただし、花はばらばらに次々と咲いてきますので、それを一斉に咲かせる技術をも同時に開発しています。



(3)高品質のトルコギキョウを冬に咲かせる技術(農研機構花き研究所、広島県、熊本県、茨城県、福岡花き農協の共同)

トルコギキョウの1~2月の入荷量は、7~8月の1/4しかありません。消費者の要望に応えられていません。

そこで、冬にボリュームがある花を確実に咲かせる技術を開発しました。

その技術は、①大きな苗を植えつけ、②ハウスの昼間の温度を高く、夜の温度を低く、③電照をして、④生育初期に重点的に肥料を与える、ことです。

これにより、1年中、高品質なトルコギキョウを生産できるようになります。



(4)病気に強いカーネーション「花恋(かれん)ルージュ」を育成(農研機構花き研究所)

カーネーションの大敵は、「立ち枯れ病」という病気で株が枯れることです。

この病気には農薬が効きません。

病原菌は、かびと細菌ですが、オランダのような涼しい国は、かびによる立ち枯れ病しか発生しません。

細菌に強いカーネーションはオランダでは育成できません。

花き研究所の小野崎さんらは20年以上の研究の結果、枯れないカーネーション「花恋(かれん)ルージュ」を育成しました。「枯れん」と「花恋(かれん)」・・・。

日本は花づくりに適した気象環境とはいえません。

そんな日本で、世界一高品質な花を生産できているのは、農家の高い技術力と勤勉さ、その農家を支える400名の研究者の技術開発力です。

しかし、400名もいるのに、現場で役立つ研究成果の数は多いとはいえません。原因の一つは、研究者と花づくり農家、農協、市場、仲卸、花店などとの交流、意見交換の不足です。

研究者は花産業の苦況に目を向けてください。

花産業で働くみなさま、ことし1年お疲れ様でした。29日が止市、年明けの1月4日の初市まで、花いちばは休みになります。しかし、農家のみなさんは盆も正月もなく、花の栽培管理に追われ、花店のみなさまは年末のかき入れ時です。くれぐれも健康にご留意下さい。

年明けの1月18日は、NaniwaFEX in N.Y.です。なにわのベテラン営業社員がニューヨークで、日本の高品質な花を売りまくります。ご期待下さい。


みなさま、よいお年をお迎えください。


2010年12月14日火曜日

坂の上の雲①昭和6年の淡路の花建設大使節

昭和25年 昭和天皇巡幸をお出迎えする淡路の生産者(新田紫紅園)




砂川忠弥先生顕彰碑(淡路市妙勝寺)



昭和初期の神戸高級園芸市場(兵庫県生花の前身)



今では考えられないことであるが、日本は貧しい国であった。ついこの間まで。


年号が大正から昭和にかわったころ、世界大恐慌にみまわれた。2008年のリーマンショックに比較される100年に一度といわれた大恐慌である。


大商社、鈴木商店が破産をした。銀行や大企業がつぎつぎと倒産し、都会には失業者があふれた。


農村では生糸輸出の激減、デフレによる農産物価格の暴落に加え、冷害による凶作が追い打ちをかけた。娘を身売りし、東北では餓死者がでた。


淡路島は農地が少ないうえに、農家戸数が多い。さらに、失業した次男三男が都会から戻ってきた。米麦だけでは生きてゆけない。農家の困窮は目を覆うばかりであった。


この悲惨な状況をみかねた農会(現在の農業改良普及センターに相当)の若い技術者たちは、有り余っている労力を利用して、集約的な花栽培に取り組もうとした。


島民の期待を一身に背負い「淡路の花建設の大使節」(新淡路新聞 昭和6年12月12日号)は、昭和6年12月、5泊6日の関東の先進地視察に旅だった。交通事情が悪かった時代の必死の思いの長旅であった。新田秀雄、砂川忠弥、土井清、斗ノ内昌一郎ら6名の津名郡農会の若い技手たちである。


視察先


静岡県:浜松、芳川村、飯田村の温室栽培(キウリ、メロン、カーネーション、バラ)


神奈川県:横浜市杉田町の温室、露地栽培(カーネーション、アスパラガス)


東京:玉川温室村(カーネーション)


千葉県:保田、富浦の露地栽培(キンセンカ、スイセン、アスパラガス、千両、コデマリ)


視察を終え、技術者たちは、淡路は関西の房州になりえると確信した。


翌昭和7年夏、3日間にわたり花卉栽培講習会を開いた。講師には、神戸高級園芸市場の畑中宏之佑を招いた。園芸家は技術を公開しないのがあたりまえの時代に、畑中は座学だけでなく、栽培技術をも懇切丁寧に教え、淡路の農民を感激させた。この畑中の長男が兵庫県生花(梅田生花)前社長、故畑中隆博である。


農会では早速に兵庫県から花卉栽培奨励金を得て、種苗を共同購入し、キンセンカ、ルピナス、矢車草、カーネーションなどを栽培した。農会技術者の熱心な指導のもと、切り花はよくできた。

キンセンカは反当たり400~500円と米の10倍以上の粗収入をあげることができた。これにより、一気に花栽培熱が高まり、淡路島は関西の重要な花の供給基地として今日に至っている。


このときの農会の技術者たちは自分でも花を栽培し、技術を向上させるとともに要職を歴任し、一生を淡路の発展にささげた。

新田は津名東農協組合長、県議会議長、砂川は初代東浦町長、土井は一宮町長、斗ノ内はカーネーション専業農家になり名人と謳われた。


淡路の花づくりのきっかけとなった農会技術者の関東視察から、来る平成23年には80年をむかえる。


80年のうち50年は坂の上の雲をめざし、必死で坂道を上り続けた時代であった。勤勉に働きさえすれば、花づくりは儲かった。儲けた金で温室を増やし、家を建て替え、子供に高等教育を受けさせた。


坂の頂にたってしまってからの30年は、目標を見失った時代が続く。働くことはいとわないが、どう働いたらよいのかがわからない。淡路の花づくりだけでなく、日本の花づくり全体がそうなってしまった。日本の国自身がそうである。


しかし、今さら坂の上の雲を見上げた貧しくハングリーであった時代に戻れるわけはない。


豊かな成熟した日本であることを自覚し、この国にあった花づくり、この国の国民が求める品質の花づくりを目指さすしかない。


今、生産者が目指している花は、日本の国民がのぞんでいる花なのか。


花が大きくて、茎が太くて長くて剛直な切り花はハングリーな国が求めている花ではないのか。


成熟した日本国の花は上品で、しなやかであるべきでは。


花業界のプロが品質を決める「裸の王様」状態になっていないか。


てはじめは、数多く開催されている品評会の審査員から、すくなくとも生産者、農業技術者を排除し、もっと普通の消費者の声を聞くことである。


















2010年12月10日金曜日

ノーベル賞受賞鈴木章先生のふるさと北海道むかわ町は小さくても光輝く花産地

鈴木章先生のノーベル賞受賞を祝うむかわ町役場




ノーベル化学賞受賞 鈴木章先生、根岸英一先生おめでとうございます。




鈴木章先生のふるさと、北海道むかわ町を訪問しました。




むかわ町は町をあげての祝賀ムード。役場には大きな垂れ幕が掲げられていました。




鈴木先生より競走馬ナカヤマフェスタのほうが目立つと感じるのは目の錯覚でしょうか。




むかわ町の花づくりは24名、アルストロメリア、スターチス、カーネーション、フリージア、トルコギキョウが主な品目です。小粒な産地ですが1戸あたりの売り上げは北海道のトップクラス(ということは全国のトップクラス)です。




なぜ、むかわ町の花づくりは元気なのでしょうか。




それは、生産者-農協-町役場-普及センターの緻密な連携と、こまわりがきく組織体の小ささです。もちろん、産地となにわ花いちばの担当との緊密な関係もお役に立てていると思います。




花づくりの現場では、農協の評価はかんばしいとはいえません。大きな合併農協になると、個々の生産者のことよりも、農協経営が優先され、資源を貯金や共済に集中せざるをえなくなります。農協の生産者離れです。




幸い、鵡川(むかわ)農協は大型合併農協ではありません。生産者と営農指導員さんとがひじょうに近い距離にあります。




農協なくして農業の発展は考えられません。農協が農協本来の仕事をすること、大きな目を開けて世間の動きをとらえ、進むべき方向を見定め戦略を打ち立てる、それこそ農協の仕事です。

それが生産者に利益をもたらすことを、むかわ町の花づくりは実証しています。




2010年11月25日木曜日

夢を買う農家育種のススメ

新品種コンテスト「ジャパンフラワーセレクション」(財団法人 日本花普及センター)





ご婦人方による交配技術研修(宝くじ共同購入育種の楽しみでもある)







今年も年末ジャンボ宝くじの季節になりました。


庶民の夢。444人が億万長者になれるそうです。


花農家には、宝くじより確率が高く億万長者になれる方法があります。

前々回、日本の育種力が低下していることをお話ししました。

その品種改良、育種です。

花農家のみなさん、種苗会社に頼るのではなく、農家みずから育種、すなわち「農家育種」をしましょう。

農家育種には3つのレベルがあります。

①起業育種、②宝くじ共同購入育種、③たねとり育種です。

①の「起業育種」は「企業育種」ではありません。花づくり農家が、自ら品種改良したオリジナル品種により、大きく飛躍して、その品目では特別な経営になる、すなわち「起業」です。

ラナンキュラスの綾園芸さん(宮崎)、トルコギキョウの中曽根さん(長野)、バラのメルヘンローズさん(大分)、今井さん(広島)、カーネーションの稲垣さん(愛知)、昼神さん(長野)、ストックの黒川さん(千葉)、オキシペタラムの笹岡さん(高知)、吉村さん(長崎)など、全国に大勢の成功者がおられます。

2代目、3代目の若い後継者は、親とは少し方向をかえて、育種に取り組んではいかがでしょうか。

③の「たねとり育種」は、別名「できちゃった育種」です。

農協の直売所や道の駅に出荷しているお年寄りや女性におすすめです。

これらの直売所では、「新鮮」、「安価」、「つくった人の顔がみえる」、がウリです。

高価な新品種のたねや苗を買う必要はありません。

古い品種や100円の絵袋のたねを買い、栽培後には自分でたねをとりましょう。

花の色や外観が少々ちがっていても、直売所では問題にはなりません。自分だけのオリジナル品種になります。

ついでに小菊やナデシコなど、さし芽でふやす種類でもたねを採ってみましょう。必ず、親とはちがう花が咲きます。それらもミックスとして商品になります。気に入った花があればさし芽で増やし、固定することができます。

この方法でたねとりをしていくと、その地域、自分の畑の環境にあった、寒さや暑さ、乾燥や湿害、病気や害虫に強い品種になっていきます。

無欲の勝利、すばらしい新品種が誕生することもあります。まさしく「できちゃった育種」です。

普及員さんや営農指導員さんに助けていただいて、新品種として、国に品種登録をすることもできます。農林水産大臣から立派な登録証がいただけます。

地域で評判になるでしょう。

②の「宝くじ共同購入育種」は、①と③の中間の、普通の花づくり農家の育種です。

これらの農家は、オリジナル品種で差別化をはかりたいが、育種にかける時間、労力がありません。

その夢を叶えるのが「宝くじ共同購入育種」です。

仲間で少しのお金を出し合い宝くじを買い、当たれば賞金を分け合うシステムです。みんなで育種労力とリスクを分かち合うのです。

夢は大きく、リスクは少なく、それなりの実利が期待できます。行政の支援を得ることもできます。

じゃまくさい交配の部分は農業試験場や農協に助けていただくことも可能です。採れたたねをまいて育てるのは農家がもっとも得意な分野です。

農家だけでなく、行政、農協、さらには花屋さん、市場を招き、みんなで夢を語りながら選抜します。

ばらばらになりがちな産地が、夢と実利を共有する育種で、ひとつにまとまることができます。宝くじであり、お祭りでもあります。

育種技術そのものはむつかしいことではありません。

めしべに、おしべから採った花粉をつけてたねを採る、生物に共通の生殖作業です。

ビギナーズラックは育種にもあてはまります。

はじめての交配では、すばらしい品種が、高い確率で誕生します。

もし、はじめての交配で気に入った花が生まれなかったら、育種はあきらめましょう。続けても泥沼にはまるだけです。先祖伝来の財産を失うかもしれません。違う夢にチャレンジしましょう。

農家育種で億万長者になりましょう。
































2010年11月16日火曜日

環境にやさしい花づくりには科学・技術の支援が必要です

写真1 夜、黄色の蛍光灯をつけて夜盗虫(ヨトウムシ)の被害を減らす





写真2 粘着版で害虫をつかまえる



化学農薬の使用量を減らし、排出炭酸ガスを減らす、環境にやさしい花を作り、安心安全な花を提供することは、生産者だけでなく、市場、花屋さん、誰もがめざすところです。
農薬の使用量を減らして、なおかつ花の病気や害虫を減らす、これは簡単なことではありません。
環境にやさしい花だからといって、ダニがついていたり、灰色かび病がでていたのでは誰も買ってくれません。


情熱や熱意、精神力だけで、ダニや病気を退治することはできません。
実現には、科学と技術の裏付けと、勤勉な労働が必要です。
ところが、「作れば売れる時代は終わった」のスローガンが一人歩きをし、モノ作りの原点が忘れられています。「売る技術」優先で、「つくる技術」が軽視されています。
「作れば売れる時代は終わった」の前提は、「どんなに品質が良くても」です。
日本はモノづくりで生きていく国です。モノづくりにゴールはありません。
日々、改善、進歩、向上です。
それにもかかわらず「環境にやさしい」スローガンだけが元気よく、それを実現する「技術と勤勉な労働」が、軽視されています。
ハウス内の湿度、温度、光環境の改善、防虫ネット、天敵、光防除、病気に強い花づくり・・・、科学の支援なしには実現できません。
日本では、農業の研究開発、技術指導は、農協と国、自治体がほぼ独占しています。つまり、税金で運営されていますので、無料でこれらのサービスを受けることができます。
環境にやさしい花づくりの実現は、花農家の身の回りにいる農協や自治体の指導員さんとの連携と栽培履歴の記帳からはじまります。

2010年10月27日水曜日

日本の育種力が低下しています


日本人は園芸好きの国民です。江戸時代には、大名から庶民まで、さまざまな花、植木を育て、楽しみ、人が持っていない珍しい品種を作り出すことに熱中していました。それは、産業として花作りが始まった明治以降も引き継がれました。その日本人が得意な品種改良が危機的な状況にあります。その輸入が急増しています。かつての花生産先進国であったドイツ、アメリカ、オランダのように、日本の花生産も壊滅してしまうのでしょうか。実は、切り花の輸入より、品種、たねや苗、球根の海外依存のほうが日本の花産業にとって、危機的な状況にあります。
日本の品種改良の強さ、弱さをあらわす指標として、「育種力(いくしゅりょく)」を考案しました(そんな大げさなものではありませんが)。




それは、(財)日本花普及センターが公開している全国24市場の品目ごとの入荷順位リストを用います。
ベストテン品種うち、国産品種の割合(取り扱い数量)をパーセントであらわしました。100はすべて国産品種で育種力が強い。0はすべて外国品種で育種力が弱い品目としました。上の図1です。
育種力100は、輪ギク、トルコギキョウ、リンドウ、スターチス・シヌアータ、ストック、ヒマワリです。ダリアは97、ラナンキュラスは92、スプレーギクは91です。
これらは、育種力が強い、すなわち国産品種ががんばっている、強力なオリジナル品種を持っている品目です。国際競争で勝てる品目です。ただし、国産品種が海外に流出してしまい逆輸入に苦しむ輪ギクは別です。

反対に、育種力0は、スプレーバラ、オリエンタルユリ、LAユリ、アルストロメリアです。

ガーベラは7、スプレーカーネーションは13、スタンダードカーネーションは20です。

これらは育種力が弱い品目で、海外品種(ほとんどはオランダ)に依存してます。コロンビア、ケニア、中国、韓国などと同じ品種を作っており、国際競争に耐えられない品目です。ユリ、アルストロメリアの輸入は多くはありません。しかし、球根をすべて海外に依存していては、日本の消費者の好みに対応することができません。

スプレーギクとカーネーションの輸入割合(2009年)は、どちらも40%です。同じ40%でも、育種力が弱く品種のほとんどを海外に依存しているカーネーションのほうが圧倒的に危機的な状況です。育種力がある程度強いスプレーギクは輸入との棲み分けで、まだがんばれます。

品種改良が大好きな日本(人)の育種力がなぜ低下したのでしょうか。

それは、種苗会社の育種力の低下です。



図2は、全国のたね屋さんの組織である(社)日本種苗協会が主催する品種コンクールに出品された品目数と出品品種数の推移です。これは種苗会社が品種改良した新品種のコンクールで、金賞を取ることは大変な名誉です。そのコンクールにおいて、1992年には、18品目306の新品種が出品されていましたが、2009年には4品目(トルコギキョウ、スターチス、パンジー・ビオラ、ペチュニア)85品種に減少しています。つまり、権威あるコンクールに出品する新品種がないということです。

種苗会社にとって、野菜のたね(品種)は大量に売れますが、多種目少量生産の花のたね(品種)は儲からないということでしょう。さらに、品種改良はできても、雨が多い日本の気候は、たね採りや球根の増殖には適していないという問題もあります。ユリは日本の原産でありながら、テッポウユリを除いては、国内では球根生産ができていません。

このように考えてくると、日本の育種力が低下したのは、品種改良をする力が弱くなったのではない、といえます。それどころか、ダリア、ラナンキュラス、トルコギキョウなど多くの花では農家による育種(生産者育種)が成果をあげています。

日本の弱点は、品種改良で作り上げた新品種のたね、苗、球根を安く生産する、種苗ビジネスの経営です。総合種苗会社、専門種苗会社が、花の消費拡大、国内花生産の持続に大きな役割を担っています。

2010年10月10日日曜日

生産者のみなさま。その言葉、通じていません

      生産者の熱き想いを伝えるには、花屋さんに通じることばを









花屋さんとの勉強会に、ゲストとして生産者に参加していただいています。
産地の特徴や、生産者のこだわり、熱き想いを語っていただき、好評です。
しかし、花屋さん、特に女性従業員の方には、わからないことがあります。
生産者にとってはあたりまえの言葉が、花屋さんに通じていないのです。
勉強会は、まず、ゲストの挨拶からはじまります。




しゅうのう2年目で、まだ勉強中です。」
しゅうのう=収納?
「就農」です。つまり、農業に就くこと、農業に就職したということですが、これが通じません。。農村では一般的なことばですが、広辞苑にもありません。「花作りをはじめて2年目です。」ですよね。




「温室2反、ろじ3反を経営しています。」
「路地」では、「雨の路地裏、法善寺~」、演歌の世界になります。農業の世界では、ろじ=露地です。ガラス温室やビニルハウスの施設栽培にたいして、覆いのないoutdoorで、農作物を作ることです。残念ながら言い換えはありません。花屋さんに施設栽培と露地栽培を理解していただきましょう(路地ではなく、露地です)。



また、若い花屋さんには、1反(たん)、10a(アール)、300坪(つぼ)という面積の単位もややこしいですね(1反=10a=300坪=1,000㎡で、同じ面積です)。反対に私は、ハウス1,500㎡といわれてもぴんときません。3.3㎡が1坪だから500坪弱か、と坪に換算しないと実感がわきません。市場の社員をも含めて、今の若い人はどんな単位を実感しているのでしょうか?当然、メートル法の㎡でしょうか(年寄りは「へーべ」と発音しますが、やはり平方メートルでしょうか)。




みしょう2か月で花が咲きます」
未生? 未詳?
漢字で書くと「実生」です。「みばえ」とは読みません。「たねから芽が出て成長すること」です。「たねをまいて、2か月で花が咲きます。」

「6月にほじょう定植をします」

「圃場」です。「圃」が当用漢字にないので「ほ場」と書きます。「田や畑」ですが、それではぴったりきません。農作物をつくる農地のことですが、圃場を知っていただくしかありません。

「定植」もわからない人がいます。「定食」のイメージが強いのでしょうか。「植え付け」です。

どの業界にも特殊な用語、いわゆる業界用語があります。

メジャーな業界、人気の業界では、業界用語が誰もがわかる、一般的な言葉になっています。

警察用語の、「ガイシャ(被害者)」、「デカ(刑事)」、「ホシ(犯人)」、マスコミ用語の「生(live)」、「ギャラ(報酬)」、「おす(時間が足りなくなる)」など・・。

花作りはメジャーな業界ではありません。お客さまである花屋さんに通じない言葉を使ったのでは、熱き想いを伝えることができません。

世間は広い。カルチャーショックを感じて下さい。カルチャーショックが勉強で、消費拡大の第一歩です。

しかし、世間にもっとも通じていな言葉は「花き」なのですが・・・。

2010年9月21日火曜日

反省なき業界 その2

小ギクのことならこの人たちに聞け
左:奈良県農業総合センター普及研修部 有馬 毅係長
右:同 研究開発部 仲 照史総括研究員

麦わら帽子にタオル、これぞ日本の技術者



お盆にキクがない、彼岸にもない。

毎年、似たようなことが繰り返されています。

それにもかかわらず、反省がみられない花業界。


①毎日毎日が勝負で、反省する余裕がない。すんだことは忘れて、また明日。

②平時よりも乱世を好む体質。勝った負けた、取った取られた・・・が、大好き。待ってましたの異常気象。業界みんながイキイキ。

③長い経験で、来年のことが見えている。来年は天候がよいうえに、生産者みんなが少しずつ植え付けを増やす。お盆にはキクがあふれる。「こんなにキク作ってどないするんや!」

④「ないない」と言われるときが華。



このような繰り返しで過ごせたのも、産地が国内だけの時代。


今や産地は世界に広がっています。

当てにならない国産より、納期を守る輸入品。


さて、いつものように来年のお天気に期待するのか?


小ギク生産者のみなさま、もう少し、花が咲く時期をコントロールしませんか。

技術はあるのですから。


露地(ろじ)の小ギク生産であっても電照は必要でしょう。


専門的な話になりますが、お盆のキクは、電照どんぴしゃの秋ギクではなく、夏秋(かしゅう)ギクです。
電照が効く品種と効かない品種があります。さらに、電照は、花芽分化(はなめぶんか)をさせないのではなく、遅らせるだけです。ですから、いつ電照を止めるかがミソです。
顕微鏡で花芽を観察して、電照打ち切り時期を決めます。その作業は、地元の技術者に助けてもらいましょう。

これだけ多くの花の技術者、研究者がいるのは、世界で日本だけです。


「露地の花はお天気任せ」は、もう通用しません。


産地のみなさま、
もう少し、
工夫をしませんか。

2010年9月7日火曜日

大阪の熱い夜~ブルームネットさん・PCガーベラさんとの勉強会~



8月25日 カラー勉強会







9月1日ガーベラ勉強会





花屋さんとの勉強会、8月のゲストは、千葉県君津市のカラー生産者ブルームネットさん、9月は静岡県浜松市のPCガーベラさんでした。その内容は、「なにわ花にっき」で、リアルタイムでお知らせしたとおりです。

ブルームネットHP http://www.bloom-net-calla.com/

PCガーベラHP http://www.ne.jp/asahi/pcgerbera/hp/top/ でもご覧いただけます。

まさに、夜8時から深夜まで、熱い勉強会でした。






大阪の熱い夜をさらに熱くしたのが、ブルームネットさんとPCさんの花屋さんに伝えたい「熱き想い」でした。


両グループともに、「環境にやさいい生産・流通の国際認証であるMPS」を取得し、さらにブルームさんは「7日間の日持ち保証」、PCさんは「採花日表示」に取り組んでおられます。まさに最先端を行く生産者たちです。これからの花産業に、激震をもたらす生産者グループで、要注目です。


取り組みのひとつであるMPSについては、残念ながら花屋さんと議論を深めることができませんでした。なぜなら、花屋さんはエコファーマーやMPSについてなにも知らされていないからです。花屋さんを対象にしたMPSもあるのですが、まだまだ認知度は低いようです。

エコファーマー、MPSの課題は、花屋さんに知っていただくことです。

産地では、エコファーマーやMPS以外にも、朝採り、日持ち保証、採花日表示、咲き切り保証・・・、そして花育、いろいろな取り組みが進行中です。


それら取り組みの最終目標は、国産の花の消費を拡大し、それぞれが利益を得ることです。

産地での熱い取り組みを、どのように活用するのか。

1.花市場は、朝採り、日持ち保証、採花日表示などの産地での取り組み情報、こだわり情報を、web販売やせり電光掲示板の備考欄などで花屋さんに伝える。

2.産地にとって、採花日を表示することには、何の問題もありません。採花日表示があたりまえになってくると、花の流通、市場のあり方そのものが変わっていかざるをえません。産地→市場→花屋→消費者の時間をいかに短くするか、が課題になります。あいまいであった「花の鮮度」とは、「収穫してから消費者に届くまでの時間が短いこと」と、定義されるようになります。


3.花屋さんは産地情報をポップやチラシ、口頭でお客さまに伝える。さらに、日持ち保証したカラー、採花日表示をしたガーベラを、どのように活用して、売り上げ増に結びつけるか、ボールは花屋さんサイドにあります。


4.忘れてならないことは、さまざまな情報は、花屋さんに支持されるモノ=花があることが大前提です。生産者は花をつくってこそ生産者です。

ブルームネットさん、PCさんが大阪の花屋さんから熱烈に支持されるのは、その花の品質の高さゆえです。

2010年8月20日金曜日

もうやめませんか「オランダでは・・・」







オランダからは多くのことを学びました。


上:バケット流通 下:市場の時計せり


野菜や果樹の人が、花業界を不思議に思っていることがあります。

それは、ふたことめには、「オランダでは・・」を繰り返すことです。

野菜や果樹の人には、この「オランダ」がわからないようです。

なぜ、アメリカでなく、ドイツでもなく、スウェーデンでもなくオランダなのか?

なぜ、地域、環境、気候、伝統文化に根ざした農業で、外国を引き合いにだすのか?

言われてみるともっともです。

なぜ、花業界では、「オランダでは・・・」が、黄門さまの印籠になっているのでしょうか。

ひとつには、野菜や果樹が国内だけで勝負できるのに対して、花はグローバル産業であるから、世界の花の中心オランダの動向を注視する必要がある、と言うこともできます。

しかし、結局のところ、明治維新以来、西洋列強に「追いつき追い越せ」が、日本人に居心地がよいポジッションなのでしょう。ある種の思考停止状態です。

いつも、お手本となる目標が欲しいのです。

オランダの前は、当然アメリカでした。

工業だけでなく、農業もアメリカは憧れでした。カリフォルニアの園芸、サンフランシスコ近郊サリナスの花づくり。

このころは、「アメリカでは・・・」、「カリフォルニアでは・・・」、「サリナスでは・・・」、「○○農園では・・・」でした。多くのアメリカの花ウォッチャーがいて、最新のデータを紹介してくれました。そのころは、「バラの適温は70°F(華氏70度)」、「植え付け間隔は3インチ×5インチ」、「収量は1平方フィート当たり何本」が、かっこよく、「収量坪に500本」などと言うのは時代遅れと指摘をされていました。ましてや有機の肥料なんて・・・。

アメリカからは多くのことを学びました。今日、日本の花生産があるのは、アメリカ式栽培方法を学んだからです。日本の花生産がはじまった100年前、英国式の軒が低く、換気が悪い温室で栽培をはじめた先駆者は、ことごとく失敗しました。冬の寒さだけを考え、夏の暑さ対策がなかったからです。英国には日本のような高温多湿がないからです。成功に導いてくれたのは、アメリカ帰りの生産者たちでした。

しかし、あれだけ目標とし、憧れであったアメリカの花生産が、南米からの輸入に対抗できず、あっけなく壊滅してしまいました。1982年(昭和57年)に、米国カーネーション協会は解散しました。わずか90年の歴史でした。日本のバラ農家が目標とした米国バラ協会も、カーネーション協会の後を追うように解散してしまいました。

1980年代後半には、世界の花生産の中心はアメリカからオランダへ移りました。そこで、ウォッチャーもアメリカからオランダに転換しました。

オランダからも多くのことを学びました。ロックウール、バケット輸送、市場の時計せりなどなど。

そのオランダも切り花生産はすでに破綻しています。

日本の花生産が1998年をピークに、右肩下がり状態になったのは、景気の影響だけではありません。もはや世界に手本とする国がないのに、生産が破綻したオランダモデルをいつまでも目標にしてきたからです。

人口1.25億人、GDP5兆ドル、花の生産者10万戸、生産面積36,000ha、切り花消費60億本、生産国であって消費国。こんな国は日本しかありません。先頭に立って、自分たちで自分たちの進む方向を決め、進んでいかなければならないのに、いつまでも世界にお手本を探し、思考停止状態に陥っていたことが、停滞の原因です。なにもかもオランダをまねようとしたことに、無理があったのです。日本人は、2番手、3番手の居心地がよく、先頭は苦手なのでしょう。世界一の長寿国は日本なのに、長寿村を探し回り、その食事や生活から長寿の秘密を探るのが日本人は好きです

花づくりは農業です。川上から川下まで多くの人がかかわっていますが、生産者以外は農業に縁がない人たちです。花は、イネやタマネギやミカンと同じで、農民が農村で作っているということを忘れていませんか。

農業は、土、気候、文化、宗教などを基盤とする産業です。温帯モンスーン地帯、小農自作農の農耕民族、神は石、木、水、山・・・森羅万象すべてに宿る多神教。この日本の農民の花づくりが進む方向は、オランダのように効率優先の狩猟民族的大規模化、重装備化ではありません。オランダですらこのやり方で破綻したのです。小農の集合体、すなわち農協共選やグループ共選で、大きな経営体になるのが日本の農業です。



1.先進国で、経済大国で、人口が1億人以上で、花農家が10万戸いて、生産国で、消費国である日本が手本にする国は世界にありません。進む方向は日本人が決めるしかありません。


2.日本の進む方向は、家族中心の、地域に根ざした経営です。家族経営が集まって、大きな生産量を確保する農協共選やグループ共選です。自信のある人は、きらりと光る個人経営をつらぬきます。


3.高い技術力による高品質生産は、農業も工業と同じです。


4.日本がオランダにかなわないのは、育種力と苗、球根生産です。まず、育種立国です。手先が器用で、観察力が鋭い日本人には、育種は得意技です。


5.「環境にやさしい」は地球人すべての目標です。農薬や化学肥料に矮小化しては本筋を見誤ります。1番の環境にやさしい花づくりは、農家が、農村で、農業を続けることです。農家が、国土、緑の環境を保全しているのです。農村の最後の砦が、花農家と畜産農家である現状では、日本の花生産が滅びると地方が滅び、国土が保全できません。


6.先進国を手本に、「追いつき追い越せ」の時代は終わりました。項目ごとに手本の国を探してくるご都合主義の手法では日本の進む方向は見えてきません。平和はスイス、福祉はスウェーデン、金融経済はアメリカ、数学はインド、花はオランダ・・・


7.「オランダでは・・・」には、ソフトバンク、犬のお父さん白戸次郎氏が、桂浜で太平洋に向かって演説する龍馬なりきり武田鉄矢に言い放った、「ふん、龍馬かぶれめ!」にならって、「それがどないしたん!」と、切り返しましょう。

2010年8月11日水曜日

反省なき業界

画像:ライト兄弟からアームストロング船長までわずか66年(Wikipedia)

お盆商戦お疲れ様でした。

猛暑の季節に、1年中でもっとも多くの花を取り扱う、人にとっても花にとっても過酷な物日がお盆です。

満足できたお盆だったでしょうか。

キクの花が遅れた、ハスの水あげが、ほおずきが、・・・

去年にも聞いたような話が・・・

お盆が終わったら、やれやれ。

次は敬老の日に彼岸、ブライダルシーズンに年末に迎春・・・、気がついたらまたお盆。

反省なき花業界。いや、反省をする余裕もない花業界。

わが国で花生産がはじまって100年、花を作る技術はどれだけ進んだでしょうか。

母の日にカーネーションが咲かない、お盆にキクがない・・・。

消費者が花を欲しいときに、花を出荷することができない。

人類がはじめて動力で空を飛んだのはライト兄弟。1903年(明治36年)のことで、花生産がはじまったのとかわらない107年前。人類はそれからわずか66年後の1969年に、アポロ11号でアームストロング船長を月に降り立たせました。その進歩の速さ。

この違いは何なのか?

それはまさしく「反省」。

行動→失敗→反省→行動→失敗→反省→・・・・・。

この繰り返しが多いほど、技術は改善され、進歩します。

残念ながら、農業は年1作、この道30年のベテランでもわずか30回の栽培経験しかありません。

栽培回数が少ないうえに反省がなければ進歩するわけはありません。

花業界は世間のお盆が終わってからが、お盆。少しの間、立ち止まって、少しの反省。

なにが問題か?対策は?



当然、「作る」が問題です。




「作れば売れる時代は終わった」といわれていますが、「売るためには作らなければならない」のです。

肝心の花がなければ、プロモーションも消費拡大もありえません。

「お天気が悪かった」は、反省ではありません。

来年になにもつながりません。

国産の花は、花屋さんに当てにされなくなっています。

「輸入が増えたから国産が減った」のではありません。

「国産が減ったから輸入が増えざるをえなかった」のです。


「咲かせたいときに咲かせる技術」は誰も教えてくれません。産地で、地元の技術者とともに作り上げるしかありません。




それが、「国産の花」が、生き続けるための第一歩です。




2010年7月29日木曜日

指の間から1円玉がこぼれ落ちています

   今必要なことは1円の積み重ね



 日本花き卸売市場協会の取扱高は、ピークの1998年には5,675億円あったのが、2009年には4,050億円にまで減ったそうです。つまり、10年で1,500億円も減ったことになります。


 こう書くとなんだか人ごとみたいですが、150社それぞれの市場の売り上げが減り、8万戸それぞれの生産者の売り上げが減り、2.5万店それぞれの花屋さんの売り上げが減った結果がこの1,500億円です。1,500億円は、トヨタやソニーの売り上げに比べると小さな金額かもしれませんが、庶民にとっては気の遠くなるような数字です。


 これを回復するにはどうしたらよいのでしょうか。花の消費を拡大しなければならない、そのために業界一丸となって、消費宣伝、ホームユース、日持ち保証、マーケティング、プロモーション、イベント・・・。


 しかし、いきなり1,500億円が消えたわけではありません。生産者が市場へ出荷した花の単価が1円、2円安くなった積み重ねが1,500億円です。1,500億円は切り花、鉢花、苗ものなどの合計ですが、切り花だけと仮定してみましょう。この10年間に600億本の切り花が出荷され、1,500億円を減らしたわけですから、切り花1本あたりでは2.5円です。




 切り花単価を、いきなり10円アップすることはむつかしいことですが、1円、2円なら簡単です。というよりも、この金額は本来稼げたはずのお金を、生産者自らが取りこぼしているお金です。つまり、かびをだした、ダニをつけた、選別が雑だった、輸送中の頭突き、出荷情報が遅い、着荷時間が遅い・・・、原因はいくらでもあります。うっかりミス、手抜き、横着・・・、上ばかり見て、足もとを見ていないのです。1万円札に気をとられ、1円玉が指の間からこぼれ落ちているのに気づいていないのです。




 景気の回復、消費拡大、流通の改善、生産の構造転換・・・、個人の力だけではどうにもならないことを悩むよりも、自分の力、産地の責任でできることを、今すぐにしましょう。


 それは、取りこぼしを減らして、単価の1円、2円のアップ、この積み重ねです。

2010年7月14日水曜日

ユニクロのL、M、Sと切り花のL、M、Sは同じですか

等級秀・階級Mの表示


等階級はすべて包含して2L







花業界では切り花の品質について誤解があるようです。



とくに、日常的に花を扱っている生産者や市場、花店と、イメージとして花をとらえている行政やマーケティングの方々との間での認識の違いです。



花の規格は、衣服の規格と同じLMSです。



では、切り花のLMSと、たとえばユニクロで売られているTシャツのLMSは同じでしょうか。



同じと勘違いしている人が多くいます。



ユニクロのLとMの違いは大きさが違うだけで、品質はまったく同じで、価格も同じです。



切り花のLとMの違いは大きさの違いだけでしょうか。



切り花の規格には、秀、優、良など品質をあらわす等級と、L、M、Sのボリュームをあらわす階級があります。秀のLという表示です(最近では産地独自のLMSでなく、だれにでもわかるセンチ表示が推奨されています)。



しかし、L、M、Sのボリューム表示だけの産地、品目も多くあります。つまり、大きいことは品質も優れ、小さいことは質も劣るというのが、切り花の考え方で、L、M、Sで品質をも含めた表示です(画像下)。



ここに日持ち保証の問題点があります。



今、日持ち保証をしようとしているのは、スーパーの花束の無人販売です。欧米のスーパーマーケットは、日持ち保証をしたので、切り花の売り上げが急激に伸びたという情報が背景にあります。スーパーの花、すなわちホームユースは、取り扱いやすい切り花の長さでお手ごろ価格、2LやLではありません。



ホームユースサイズであるMを日持ち保証するのは生産者にとってつらいことです。



日持ちにも誤解があります。日持ちを決定するのは、収穫後の取り扱いが3割、栽培環境、栽培技術で7割です。ハウスの中でじっくり同化養分を溜め込んだ花は、日持ちが長くなります。そのような花はボリュームも2Lになります。M、Sは、2Lをめざしたが、うまくいかずMやSになってしまった同化養分が少ない花です。



ここがユニクロと決定的に違うところです。



日持ち保証は意欲のある花屋さん、市場、それをサポートするマーケティングの人たちにより歩み始めていますが、欠けているのが、高品質なホームユースサイズ、Mを作る生産者です。持続可能な日持ち保証には、日持ちが長い切り花の生産が基本です。



それは、日本の優秀な生産者にとって、むつかしいことではありません。



問題は、Mを作った経営を成り立たせた事例がない、ということです。新しい品質、規格を提案し、成功させるには、生産者の熱き想いと手を携える市場の存在が不可欠です。










2010年6月22日火曜日

生産者には、まずなすべきことがある、のでは?

                      ガーベラは品評会泣かせ






花屋さんの鮮度管理セミナーの講師をつとめさせていただくことがあります。

講演を終わっての質疑応答、きまってダリアとガーベラです。

ダリアの水あげが悪い、日持ちが短い、ガーベラの水が下がる・・・。

こんなにも花屋さんが苦労しているとは!

「巨大輪のダリアはもともと花壇の花で、切り花にすると日持ちが悪いのは仕方がないことです。日持ちだけが価値ではありません。」の説明で、なんとなく納得していただけます。それがダリアの勢い、時代の花だからでしょう。でも、いつまでもこれで通用するわけではありません。今の巨大輪、花色が陳腐化したときには、水あげ、日持ちの悪さがボディーブローのようにきいてくるでしょう。

一方、成熟したメジャー切り花であるガーベラに、今でも花屋さんが手こずっているのは、悲しいことです。


上の画像は、日本一の花の展覧会、東京池袋で毎年開かれる「関東東海花の展覧会」のガーベラです。これではガーベラは水あげが悪いので、買わないでくださいと宣伝しているようなものです。
花の産地では、つねに日持ちを検査しています。産地ではガーベラの水が下がる、日持ちが悪いなど夢にも考えていません。花屋さんの意見となぜ違うのでしょうか。
それは、日持ち検査の方法に原因があります。日持ち検査マニュアルでは、形質のよくそろった切り花を5~10本選び、定められた切り花長で切り戻し・・・となっています。
この過程で、カビがはえた花、茎が弱い花、花首があやしい花などははねられています。結局、多くの花の中から、品質のよい花だけが日持ち検査されているのです。このような切り花では、水が下がり、極端に日持ちが短いことは、まずありません。
花屋さんが問題にしているのは、購入した1ケース30本なり50本なりに、1本でもカビがはえていたり、水が上がらなかった花があれば、そのケースすべてがクレームの対象になります。
これが花屋さんと産地との認識の違いです。


さて、水の下がった花はどうするのか。
どんなマニュアル本にも水切り、湯あげ、焼く、割る、たたく・・・などの水あげ技術が紹介されていますが、こんなのは、鎌倉時代か室町時代の秘伝です。平成の大量流通商品(ガーベラは年間2億本近くが消費されています)が、お客さまにお願いすることではありません。

切り花用のハサミさえ、家庭にはないのですから。

漂白剤、洗剤・・・、裏技でもなんでもありません。おじさんの、小ねた、うんちくにすぎません。

消費拡大は、「秘伝から科学へ」です。

そして、ガーベラこそ、「産地から日持ち保証、品質保証」商品です。

収穫後の管理より、まず、水がさがらないガーベラ生産です。

「それがむつかしいから苦労しとるんや」
そのとおり。
まさに「産地力」、「業界力(キク業界、バラ業界、カーネーション業界、ユリ業界、ガーベラ業界・・・)」の競争です。

それぞれの地元には優秀な農業試験場があります。
国立地方大学農学部は、産地からの働きかけを待っています。ガーベラには静岡大学農学部があります。おなじように、マーガレットには、香川大学農学部があります。

優秀なドクターが研究室の扉を開けて、お待ちです。








2010年6月3日木曜日

花いちばはこんなところです④市場のハサミ




上の写真は、NaniwaFEXやさまざまなイベントで花の飾り付けをお願いしているテクノホルティ大阪校の学生さんが、お腰にぶらさげているハサミです。用途にあわせてこれだけのハサミを持ち歩いています。これ以外に、ナイフもあります。その他、カッター、メジャー、マジックインキ・・・、装飾作業に必要な、ありとあらゆる道具が、ドラエモンのポケットのごとくあらわれます。
たしかに、花農家でも、種類よってハサミが違います。 カーネーションの芽きりバサミでバラを切ると、たちどころに刃こぼれがします。反対に、バラの剪定バサミでカーネーションを切ると、腕がつかれて仕事になりません。テクノの学生さんは、それを使い分けているので、これだけのハサミにナイフがいるのですね。


一方、下の写真は、おなじみのぅみっ子ですぅ~。

お顔を見ていただけなくて残念でぇすぅ。。。
  

 
市場人にハサミは、切っても切れない?関係で、みんな腰にぶら下げています。

入社した際にハサミが支給されるそうです。

キク・バラ・カーネーション・草花・枝もの・・・ありとあらゆる花を毎日取り扱っている市場のハサミはこれだけ。


茎を切る・割る・たたく・針金まで切る・・・何でもこれひとつ。さすがに、融通無碍・柔軟性の花いちばの真骨頂です。


花市場では、しょっちゅう花を切っている。そんなイメージですが、営業部員が花を切っている姿は見たことがありません。どうも花いちばのハサミは、出荷ケースのPPテープを切る、ガムテープを切る・・・、そんな役割のようです。

 

2010年5月12日水曜日

5年に1度のベルギー・ゲント国際花博で審査員


①甲子園球場より広い花博会場

②世界から集まった審査員(非白人は私だけ)

③アザレアがメイン

④あいかわらず盆栽(Bonzai)は人気

⑤今回は常緑樹の展示が増えた



ベルギーという国は、日本ではあまりなじみがありません。花といえばオランダですが、ベルギーはオランダのお隣、工業国であるとともに、花の生産国です。オランダの大規模企業経営に対して、ベルギーは個人経営の花づくりで、日本人には親近感があります。



ゲントは、中世そのままの石畳が美しい観光地であるとともに、アザレアの産地です。日本ではアザレアの鉢物はあまり目にしなくなりました。アザレアと日本のサツキ・ツツジはどう違うのか。日本のサツキ・ツツジが江戸時代、シーボルトなどプラント・ハンターにより、ヨーロッパに伝えられ、改良されたのがアザレアです。ゲントでは、アザレアをアザレア・インディカ、サツキをアザレア・ヤポニカとよんでいました(植物学的には正しくはありませんが)。ですから、200年の歴史を誇るゲント国際花博は、超巨大なサツキ祭りといえます。



ゲント国際花博に審査員として参加するのは4回目です。なぜ、ベルギーの花博に参加するようになったかを説明しなくてはなりません。そもそもは、2000年に開催された淡路花博の宣伝を兼ねて、1995年に兵庫県が出展したときに、私も審査員として参加しました。それ以来、1995年、2000年、2005年と今回で4回目の参加です。毎回、イースター休暇にあわせて開かれ、今年は4月14~25日でした。国際博覧会ですから、審査員の数も膨大で、今回は36班、216人でした。地元ヨーロッパに、カナダ、オーストラリア、アメリカなどの人たちで、白人でないのは私だけす。私の2F班はフランス人2人、ドイツ人、カナダ人と審査補助の地元のアザレア農家の構成で、観葉植物を担当しました。花博会場は広大で、超巨大な体育館に、植物を植え込んだ状態です。会場の面積は甲子園球場(約4ha)より大きい4.5ha(45,000m2、13,500坪)で、入口から出口まで歩くだけで2時間かかります。



さて、はじめて参加した15年前と比べるとベルギーの花産業は大きく変化しました。



①花づくりの勢いがなくなりました。会場面積はかわっていませんが、出展の国の数が減り、ヨーロッパの花産業のかげりが感じられました。15年前はアールスメア市場などオランダが圧倒的な存在感でしたが、今回はまったく目立ちませんでした。



②一般経済にも変化が見られました。花博会場前の広大な芝生広場に巨大なIKEAが建っていました。首都ブリュッセル市内でもルイヴィトンなどの高級店にかわり、H&Mがやたら増えていました。



③これまでのしつこいほどのアザレアの割合が減りました。さすがにベルギーの人も暑苦しさを感じるようになったのでしょうか。かわって、前回はオリーブ、今回は孟宗竹に、日本ではどこにでもある常緑の雑木が増え、緑の落ち着いた雰囲気になりました。



④日本では見かけることが少なくなった観葉植物アナナナス類などが復活して、巨大なオブジェとして大量に使われていました。



⑤あいかわらず盆栽(ベルギー産、Bonzai)は人気でした。ベルギー人がイメージしたドラゴンにドラの音が響く、中国とごっちゃになった大きな日本庭園も出展されていました。日本ではイングリッシュガーデンやピーター・ラビットの庭が人気ですが、ヨーロッパでは日本庭園が憧れです。



毎回参加して思うこと。



その一 語学力の大切さ。ベルギーではオランダ語とフランス語が公用語で、ドイツ語も話し、英語も堪能です。審査もこの4か国語ですすめられ、私だけが置いてきぼりです。毎回、帰国後、英語を勉強して5年後には・・と反省するのですが、決意は夏までも続きません。



その二 せめて花の名前だけでも話せたら。世界共通の名前が学名です。今回の担当は観葉植物でしたので、日本での呼び名は学名そのままです。ベゴニア、カラテア、チランジア・・・で通じます。しかし、むつかしいのが今回大量に展示されていた日本ではどこにでもある樹木です。ツバキはカメリアですが、カシ、クスノキ、ツゲ・・・の学名は?花屋さんはフラワーデザインなどを勉強に、ヨーロッパに行く機会が多いはずです。外国人と花の名前を話すには学名が必要です。






今回も反省ばかりのゲント国際花博でした。おまけに、火山爆発でブリュッセル空港に1週間も立ち往生。日本へ帰れてよかった。


2010年5月3日月曜日

102年目の母の日と96年目の母の日

銀座ソニービル「母の日イベント 銀座に5,000本の国産カーネーション畑」(2010年4月6~11日)

                       今年の母の日は5月9日


「母の日」に、秘められた思い。
ここに一つの調査がある。

「母の日」の由来を知っていますか。

以前から知っていた・・・・29%  知らなかった・・・・71%

日本人にもなじみ深い5月第2日曜日の「母の日」。しかしその誕生に秘められた思いを知っている人は、決して多くはない。

これは朝日新聞4月30日の全面広告です。

朝日新聞は、「母の日」の由来を知っている人が29%を「決して多くはない」と書いていますが、29%もの人が知っているのはスゴイことではないでしょうか。花業界に身を置く人たちでさえ、由来を知っている人はそんなに多くはありません。その証拠に、2年前の2008年は「母の日100年」でしたが、花業界で100周年記念イベントはありませんでした。なにわ花いちばでもカーネーション担当者が、手作りの「母の日100年」ポスターを場内に張り出しただけでした。せっかくのビジネスチャンスを逃していたのです。


「母の日」の由来については、この朝日新聞記事をはじめ、いろいろ書かれています。


ここでは、月刊誌「実際園芸」1928年(昭和3年)5月号の記事をご紹介しましょう。実際園芸誌は、現在の誠文堂新光社「農耕と園芸」の前身です。


まず、1928年(昭和3年)当時には「母の日」という名称はまだなかったようです。


記事の題名は「園芸家の忘れてはならぬマザーズデーの話 恩地 剛」。英語そのままの「マザーズデー」が使われています。



「フィラデルフィア州のアンナ・ジャービス嬢は、非常に母思いの深い人であり、年々5月の第二日曜日を、その母への感謝日と定めて、母の属する協会に、母の最愛の純白色のカーネーションを装飾し、日曜学校の子供達や、自分の友人知己、協会の仲間を招いて、賛美歌「母を慕う」を合唱してもらい、来会者一同には純白のカーネーションを胸に飾ってもらうことにし、心からの感謝と愛慕をその母に捧げたのであります。これが年とともに、驚くべき勢力をもって今日の如き流行をみるにいたり、アメリカ政府は、国祭日の一つに加えたのであります。私は、やがてこの流行がわが国にも渡来し、かつ歓迎されるものと信ずるものであります。」


この記事を書いた恩地さんが願ったように、日本でもマザーズデーは「母の日」と呼ばれるようになり、一大イベントとなりました。


さて、「母の日」のひとつの起源は、1908年(明治41年)にアンナ・ジャービスさんが、日曜日の礼拝で、参列者に白いカーネーションを手渡し、亡き母をしのんだことに由来します。しかし、アンナさんはもともとたいへん信仰心が厚い方で、それ以前からお母さんに感謝することを、みんなに説いていました。ですから、あえて1908年にこだわる必要はありません。



それより、1914年(大正3年)に、ウイルソン大統領が5月の第2日曜日を国の祝日にしたことが、正式な「母の日」の起源でしょう。そうすると、2010年5月9日は、96回目の「母の日」で、「母の日100年」は、4年後の2014年(平成26年)になります。そのときには国をあげての大イベントにしましょう。

みなさん、「2014年(平成26年)母の日100年」をお忘れなく。

2010年4月2日金曜日

4・18ガーベラ記念日と花の偉大な研究者 松川時晴さん




毎日、何かの「○○の日」があるようです。

なにわ花いちばのHPでお知らせしているように、「4月18日はガーベラ記念日」(社団法人日本花き生産協会日本ガーベラ生産者機構)だそうです。「418」を「よいはな」にかけたそうです。「よいはな」なら、ガーベラに限らず、バラでもユリでも、すべての花の日やないか!、とツッコミは入りそうです。上に示した4・18のポスターをよく見ると下の方に小さな字で、「4月18日は国産ガーベラの誕生を記念して、ガーベラの日に制定」と書かれていました。昨年、場内に掲示されていたポスターには、A4サイズの小さなビラが添えられていました。


それはこのような内容です。

「昭和33年4月に、九州農業試験場研究員であった松川時晴氏がガーベラを交配して、その中から今までにない八重の新しい花が咲いているのを発見。「レインボー」、「クレオパトラ」と命名して、農林省に名称登録を申請し、受理された。このように、わが国で初めてガーベラの新品種が正式に誕生したのが4月18日である。」

なんと、松川さんはガーベラの品種改良までしていたのか!!。

元福岡県の園芸試験場研究員の松川時晴さんは、花の研究者・技術者の大先達、今日の花の栽培技術、品種改良の礎をきずかれた方です。私も公私にわたり、ご指導をいただきました。

そのご活躍は多方面です。

カーネーション生産者には、名品種「希望」、「雪化粧」などの育成者として有名です。

ユリ生産者には、現在でもテッポウユリの代表品種「ひのもと」を名称登録して、促成技術を開発したことで有名です。

輪ギクでは、「秀芳の力」のロゼットを苗冷蔵と温度管理で防いだことで知られています。

また、ユリの頭をなぜると草丈が低くなる、いわゆる「接触わい化生理」を発見しました。

農業高校の花の教科書(農文協)には、松川さんのエピソードが載っています。

「テッポウユリの球根につくネダニの防除に苦慮していた松川時晴は、昭和38年に、球根を45℃のお湯につけるとネダニが死ぬことを発見した。松川の観察眼はするどい。お湯につけた球根は、発芽が早くなり、生育が旺盛で、 病気も少なくなり、花が早く咲くことに気がついた。この温湯消毒技術はまたたくまに全国に広がった。」(執筆者は私ですが)

大阪府立大学を卒業した松川さんは、戦後の混乱が続く昭和26年、国立九州農業試験場に着任、輸出用テッポウユリ、ガーベラの品種改良を担当した。昭和33年には福岡県立農業試験場へ移り、昭和62年に退職するまで、花の研究一筋ですごされました。この間、先に述べたように数々の成果をあげ、花産業の隆盛に大きな貢献をされました。

日本有数の花産地、和歌山県御坊市の柏木征夫市長は、元は福岡県農業試験場の研究員で、松川さんの部下であった方です。

ごく一部の人しか知らなかった松川時晴さんの功績を忘れずに、4月18日をガーベラ記念日に制定されたガーベラ生産者機構のみなさま、ありがとうございます。


4月18日は、まさしくガーベラ記念日です。
もちろん、なにわ花いちばでも、ガーベラ記念日を盛り上げるべく、ガーベラの展示をしています。
担当は、営業推進部の紅一点、船越友美です。

2010年3月25日木曜日

2010年春 彼岸商戦から見えてきたもの

生産者、小売店のみなさま、花産業のみなさま、彼岸商戦、お疲れさまでした。









暖地の花生産者にとって、春の彼岸の市況は経営的、精神的に大きな影響を及ぼします。


高い重油、灯油を焚いてハウスを暖房し、ひたすら彼岸に花を咲かせることを目標に、手入れをしてきたのですから。1月、2月は売り上げよりも暖房経費のほうが多くかかっています。それだけに、彼岸の市況が低いと意気消沈で、将来が一挙に不安になってしまいます。


幸い、今年の彼岸は花屋さんのがんばりで、そこそこ花が売れたようです。産地もなんとか息をつけたといった状況でしょうか。


この彼岸商戦から、今の花産業の問題点が見えてきます。


①春の彼岸に花を咲かせる作型は、もっとも生産コスト、暖房経費がかかります。そのため、生産者は経営全体をみすえて、コストのかかる彼岸を減らし、コストがかからない春などに生産の重点をシフトする傾向があります。これは燃油高騰の対策として、行政が指導している点でもあります。

②その結果、彼岸に必要な量が供給できなくなります。国内で生産と消費が完結していた時代なら、「供給不足→価格高騰→翌年は生産過剰→暴落→」となっていました。「高値」が忘れられない、ばくち大好きの生産者にとっては面白い時代でした。

③今は安定供給が最優先です。春の彼岸、卒業式などで、決まった量の花が必要です。国内生産者が供給できなければ、供給先を世界に求めるのは当然です。国産が減った分だけ輸入が増える、「悪循環」におちいります。輸入が増えたから国産が減ったのではなく、国産が減ったから輸入が増えたのです。

④そんなことは生産者は百も承知です。作っても市況が安く、儲からないから作らない、作らないから輸入が増える、輸入が増えると単価が下がる・・・。卵が先か鶏が先かの議論になってしまいます。

⑤生産者には、高品質の花を作るDNA、匠のわざのDNAしかありません。それだからこそ、前回紹介したように、ニューヨークっ子を驚かせる、世界に通用する日本の高品質な花を作ることができるのです。大工さんにも旋盤工にも日本人にこのDNAがあるから、小国日本が世界で生きていけるのです。

⑥今必要なことは、従来からの高品質な秀2Lをめざす経営と、高品質なMクラスの花をめざす経営の分離、すみ分けです。ホームユース、家庭に飾る花はすでに定着しています。消費者がそれらを手に入れるのはスーパーマーケットや量販店ということも定着しています。「カジュアルフラワー」は「安かろう悪かろう」のイメージが強く、各方面からさんざん非難され、言葉としても、実際の花としても定着することができませんでした。その後、ユニクロの登場で、カジュアルのイメージが一挙に向上しました。

⑦カジュアルフラワーという言葉の復権と、ユニクロのように高品質なカジュアルフラワーを生産する経営、生産者、産地の登場がのぞまれます。すなわち、秀2Lをめざしたけれど、手入れ、ハウス環境がうまくいかずにMになったMではなく、Mをめざした高品質なMの生産です。これが今求められるカジュアルな花です。そのためには、品目ごとにカジュアルな花の高品質とはどんな品質かの定義、目標が必要です。その品質目標(当然、坪当たりの収量目標も)に向けた栽培技術を組み立てることが緊急の課題です。

2010年2月19日金曜日

撃ってでる~日本の花がNYで高評価-NaniwaFEX in NewYork~


先にお知らせしましたように、1月25日、ニューヨークで「高品質な日本の花を海外へ」をキャッチフレーズに、日本の花の展示会・商談会NaniwaFEX in NewYorkが開催されました。

大阪の花いちばが、わざわざニューヨークへ出かけていったのは、日本の花のすばらしさを海外へ伝え、花の需要を拡大するためです。

その様子は、なにわ花市場HPの画像でご覧ください。

大西社長以下の面々のいでたちは、背に「花」の漢字一文字、ピンクの法被、黒の鉢巻、コテコテの大阪です。コテコテですが仕事はがっちり、商売上手の大西常裕部長、井内課長、竹村課長、中村課長です。

展示会には国内50産地から237アイテムの花を出品いただきました。その自慢の花を贅沢なことに、ニューヨークで活躍するデザイナーhanna NOIRの竹中健次さんに演出していただきました。

当日、ニューヨークは土砂降りの雨。
アメリカの花屋さんに来場いただけるのか心配でした。うれしいことに、12時の開場を待ちかねて、60社121名のバイヤーの方々が来ていただきました。はるばるフィラデルフィアからバスを乗り継ぎ、3時間かけて来た花屋さんもおられました。
日本の花いちばと花の特徴についてのプレゼンテーションも熱心に聴いていただけました。問屋、仲卸だけで市場がないアメリカの花屋さんにとって、日本の花いちばの形態は興味深かったようです。

以上、見てきたようなことを書きましたが、すべて竹村課長からの受け売りです。

展示会の効果は歴然でした。

注文はそれまでの4倍に増え、展示会後の3回の輸出だけで前年の半数に近い量になりました。日本の高品質な花は、アメリカでも十分に通用したのです。

どんなところが評価されたのでしょうか。

①もともと人気が高かったグロリオサ、スイートピー、ラナンキュラス、ダリア、スカビオサ、ブルースターは、品質の良さ、花の色の豊富さ、ボリュームで一層、評価を高めました。

②枝物に関しては完成度の高さと“ふかし技術”に注目が集まりました。

③シンビジウムの切り花はボリュームと花の色で評価されました。

④嬉しいことに、バラ、カーネーションでも南米からの輸入品にないバラ、カーネーションらしくない特殊な品種や、日本のオリジナル品種はアメリカで十分に通用することがわかりました。

国内消費が低迷している現在、高品質な日本の花は、流通のコストダウンを進めれば、高単価で世界に輸出することができます。

そのためには市場だけでは力不足です。産地のご協力が必要です。

長時間の輸送にそなえた切り前、ボトリチスの予防が必要です。今は、産地から届いた花を、いちばで専用のケースに詰め直していますが、輸出量が安定すれば、産地で箱詰めをしていただくようになるかもしれません。

日本全国ではいろいろな花が作られています。自慢の花をニューヨークに送ってみたいという生産者、産地の皆様は、なにわ花いちばへお問い合わせ下さい。

ただし、アメリカでは野菜果樹に関連する桜・梅・桃といったものは原則として輸入は禁止です。また、菊に関しては輸出に関する条件が厳しいとのことです。























2010年2月3日水曜日

和歌山スプレーマム研究会青年部の具体的活動

                    緊張した様子の青年部のみなさん                  会が終わったあとも話し合いは続きました・・



花の消費拡大は、産地-市場-花店の連携による具体的な活動を・・と、以前お話をしました。また、花の消費者は花屋さんであることも説明しました。



不思議なことですが、花産地では消費者である花屋さんの要望や意見をお聞きした経験がほとんどないのです。それは全国に26,000軒といわれている花屋さんの誰と話をしたらいいかがわからないのです。これまでも産地の研修会などで花屋さんを講師として招いたことはありますが、消費者である花屋さん全体の流れがつかめきれないもどかしさを感じていたのではないでしょうか。



その産地に必要な花屋さんと、生産者を結びつける役割は市場です。市場が得意とする分野です。



生産者と花屋さんの交流会として、1月27日、和歌山県スプレーマム研究会青年部13名と農協担当者が、なにわ花いちばに来場されされました。



夜8時、緊張した面持ちの青年部と花屋さんの話し合いが始まりました。



市場の担当者は、和歌山スプレーマムの方々に必要な花屋さんに出席をお願いしていました。



フラワーデザインスクールの担当者、専門店、webでのみ仕入れる専門店、多くの店を展開するチェーン店、葬儀関係の量販店、スーパーへ納入の量販店、葬儀会社の担当者、場内仲卸、そして産地のライバルともいえる輸入業者・・、さまざまな業態の花店です。こんなことは市場だからできるワザです。



スプレーギクの輸入割合は37%、メジャーな花ではもっとも輸入が多い切り花です。



案の定、輸入のほうがボリュームがあるので、輸入しか使わないとの量販店の発言がありました。天のつぼみを取っているので、花がドーナツ状になり、葬儀用に使いにくいと、生産者にとっては、ずっこけるような意見もありました。輸入業者の品質への自信・・・、国内生産者に欠けている部分でしょうか。


産地では毎年苦労して新しい品種を導入していますが、花店にとってはどこが新しいかわからないなど、生産者がへこむような意見をもかずかずにいただきました。


花店は業態が多く、意見もさまざまであることも痛感されたようです。



和歌山のスプレーマムはどこをターゲットにどんな品種をどんな品質で、生産、出荷していくのか、青年部のみなさんにとって言い足りない、聞き足りなかったようです。夜が更けるのを忘れて話し合いが続きました。

今度は、自分たちが熱き想いをこめて作ったスプレーマムを花屋さん、ぜひ使ってくださいと主張しましょう。日本人の感性にあったスプレーマムの生産、出荷をお待ちしています。


1回ではとてもむりですので、ぜひ続きの会を。

それにしても花産業、早朝のせりから深夜の勉強会まで、よく働く業界ですね。お疲れさまでした。

2010年1月23日土曜日

撃ってでる~2010年1月25日 NaniwaFEX in NewYork~







切り花の輸入が年々増えています。


2008年には国内消費量約60億本のうち19%が輸入です。もともと輸入に依存していたラン類の87%、切り葉・切り枝の77%は別格としても、スプレーギクは37%、カーネーションは36%、バラは18%が輸入です(宇田調査)。


先進国の花生産は、季候が良く、人件費が安い南米、アフリカ、アジアの国々からの輸入に敗退し、日本だけがなんとか踏みとどまっている状況です。


その日本の生産者も苦戦を強いられ、厳しい経営状況です。




しかし、輸入増加を嘆いていても仕方がありません。
日本の切り花品質は世界一です。


世界一の日本の切り花が世界で勝負する、そんな想いでなにわ花いちばでは、産地の皆様とともにアメリカ ニューヨークへ輸出を試みてきました。


その結果、日本の切り花はアメリカで十分に通用することがわかりました。




それでついに2010年1月25日、ニューヨークでNaniwaFEXです。


日本の花の展示、商談会です。


産地からの自慢の切り花とともに、ベテランの営業担当者が大阪のど根性で展示会にのぞみます。


どんな営業活動が展開されるのでしょうか。


乞うご期待!


結果は後日報告します。


















2010年1月4日月曜日

2010年花産業のキーワードは「環境」

明けましておめでとうございます。

新しい年が始まりました。
2010年、いよいよ花産業環境の年の幕開けです。

1.政府のお約束

1999年には「持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律」が施行されました。
農地の生産力の維持増進と良好な営農環境を確保するために
①土づくり
②化学肥料の低減
③化学合成農薬の低減
以上3つに取り組む計画を作成し、都道府県知事が認定した生産者が「エコファーマー」です。

さらに、2006年には「有機農業の推進に関する法律」が施行され、化学的に合成された肥料、農薬、遺伝子組み換え技術を使用しない有機農業の推進がうたわれています。

ここまでは化学肥料や農薬を減らして、「環境にやさしい農業」をすすめましょうという農業内での活動でした。それに新たに、「地球温暖化防止」が加わりました。

日本は世界にむかって、「2020年に温室効果ガス(炭酸ガス)を1990年の25%削減する」と公約したのです。炭酸ガス削減は、生産者だけでなく、市場、花店、消費者すべてが取り組むグローバルな活動です。

2.消費者は環境にやさいい花を求めている

平成21年JFTD白書によると、JFTDのお客さんのなんと99%は「環境にやさしい商品がほしい」と要望されるそうです。ちなみに「日持ちする商品が欲しい」は40%、「鮮度が良い花が欲しい」は27%、「季節感がある花が欲しい」は22%だそうです。くやしいですが「国産品が欲しい」と要望されるお客さんはたった3%だそうです。

3.「理念」から「実利」へ

世の中はきれいごとだけではすすみません。「環境にやさしい」という理念には誰もが大賛成です。しかし、実利が伴わないと拡大、普及はしません。それが、JFTDのアンケートにあるように、いよいよ環境にやさしい花が注目されてきたようです。消費者が欲しているのに、商品がないでは生産者のつとめを果たせません。環境にやさしい農業は儲かる農業になるのです。

4.環境認証は目的ではなく手段

エコファーマーやMPSなどの認証取得は目標ではなく、手段です。目標は化学肥料、農薬を減らし、炭酸ガス排出が少ないエコな生産をすることです。まず栽培技術、栽培環境の改善に取り組みましょう。

5.市場、花店も力を合わせて

学肥料、農薬削減は生産技術の取り組みですが、炭酸ガス削減は市場、花店、みんなの取り組みです。例えば、必要以上のボリュームを求めていませんか。実際に必要な長さの切り花であれば生産性が高まり、出荷ケースが小さくなり、トラックの積載効率が高くなり、大幅に炭酸ガス排出を減らすことができます。さらに花店での生ゴミが減ります。

6.生産履歴の記帳を

生産者はどんな方法で生産した花かを、消費者に示すことが環境に優しい花づくりの第一歩です。そのためには栽培記録です。産地で共通の記録ノートをつくりましょう。

2010年、花産業のキーワードは「環境」です。