2010年7月29日木曜日

指の間から1円玉がこぼれ落ちています

   今必要なことは1円の積み重ね



 日本花き卸売市場協会の取扱高は、ピークの1998年には5,675億円あったのが、2009年には4,050億円にまで減ったそうです。つまり、10年で1,500億円も減ったことになります。


 こう書くとなんだか人ごとみたいですが、150社それぞれの市場の売り上げが減り、8万戸それぞれの生産者の売り上げが減り、2.5万店それぞれの花屋さんの売り上げが減った結果がこの1,500億円です。1,500億円は、トヨタやソニーの売り上げに比べると小さな金額かもしれませんが、庶民にとっては気の遠くなるような数字です。


 これを回復するにはどうしたらよいのでしょうか。花の消費を拡大しなければならない、そのために業界一丸となって、消費宣伝、ホームユース、日持ち保証、マーケティング、プロモーション、イベント・・・。


 しかし、いきなり1,500億円が消えたわけではありません。生産者が市場へ出荷した花の単価が1円、2円安くなった積み重ねが1,500億円です。1,500億円は切り花、鉢花、苗ものなどの合計ですが、切り花だけと仮定してみましょう。この10年間に600億本の切り花が出荷され、1,500億円を減らしたわけですから、切り花1本あたりでは2.5円です。




 切り花単価を、いきなり10円アップすることはむつかしいことですが、1円、2円なら簡単です。というよりも、この金額は本来稼げたはずのお金を、生産者自らが取りこぼしているお金です。つまり、かびをだした、ダニをつけた、選別が雑だった、輸送中の頭突き、出荷情報が遅い、着荷時間が遅い・・・、原因はいくらでもあります。うっかりミス、手抜き、横着・・・、上ばかり見て、足もとを見ていないのです。1万円札に気をとられ、1円玉が指の間からこぼれ落ちているのに気づいていないのです。




 景気の回復、消費拡大、流通の改善、生産の構造転換・・・、個人の力だけではどうにもならないことを悩むよりも、自分の力、産地の責任でできることを、今すぐにしましょう。


 それは、取りこぼしを減らして、単価の1円、2円のアップ、この積み重ねです。

2010年7月14日水曜日

ユニクロのL、M、Sと切り花のL、M、Sは同じですか

等級秀・階級Mの表示


等階級はすべて包含して2L







花業界では切り花の品質について誤解があるようです。



とくに、日常的に花を扱っている生産者や市場、花店と、イメージとして花をとらえている行政やマーケティングの方々との間での認識の違いです。



花の規格は、衣服の規格と同じLMSです。



では、切り花のLMSと、たとえばユニクロで売られているTシャツのLMSは同じでしょうか。



同じと勘違いしている人が多くいます。



ユニクロのLとMの違いは大きさが違うだけで、品質はまったく同じで、価格も同じです。



切り花のLとMの違いは大きさの違いだけでしょうか。



切り花の規格には、秀、優、良など品質をあらわす等級と、L、M、Sのボリュームをあらわす階級があります。秀のLという表示です(最近では産地独自のLMSでなく、だれにでもわかるセンチ表示が推奨されています)。



しかし、L、M、Sのボリューム表示だけの産地、品目も多くあります。つまり、大きいことは品質も優れ、小さいことは質も劣るというのが、切り花の考え方で、L、M、Sで品質をも含めた表示です(画像下)。



ここに日持ち保証の問題点があります。



今、日持ち保証をしようとしているのは、スーパーの花束の無人販売です。欧米のスーパーマーケットは、日持ち保証をしたので、切り花の売り上げが急激に伸びたという情報が背景にあります。スーパーの花、すなわちホームユースは、取り扱いやすい切り花の長さでお手ごろ価格、2LやLではありません。



ホームユースサイズであるMを日持ち保証するのは生産者にとってつらいことです。



日持ちにも誤解があります。日持ちを決定するのは、収穫後の取り扱いが3割、栽培環境、栽培技術で7割です。ハウスの中でじっくり同化養分を溜め込んだ花は、日持ちが長くなります。そのような花はボリュームも2Lになります。M、Sは、2Lをめざしたが、うまくいかずMやSになってしまった同化養分が少ない花です。



ここがユニクロと決定的に違うところです。



日持ち保証は意欲のある花屋さん、市場、それをサポートするマーケティングの人たちにより歩み始めていますが、欠けているのが、高品質なホームユースサイズ、Mを作る生産者です。持続可能な日持ち保証には、日持ちが長い切り花の生産が基本です。



それは、日本の優秀な生産者にとって、むつかしいことではありません。



問題は、Mを作った経営を成り立たせた事例がない、ということです。新しい品質、規格を提案し、成功させるには、生産者の熱き想いと手を携える市場の存在が不可欠です。