等階級はすべて包含して2L
花業界では切り花の品質について誤解があるようです。
とくに、日常的に花を扱っている生産者や市場、花店と、イメージとして花をとらえている行政やマーケティングの方々との間での認識の違いです。
花の規格は、衣服の規格と同じLMSです。
では、切り花のLMSと、たとえばユニクロで売られているTシャツのLMSは同じでしょうか。
同じと勘違いしている人が多くいます。
ユニクロのLとMの違いは大きさが違うだけで、品質はまったく同じで、価格も同じです。
切り花のLとMの違いは大きさの違いだけでしょうか。
切り花の規格には、秀、優、良など品質をあらわす等級と、L、M、Sのボリュームをあらわす階級があります。秀のLという表示です(最近では産地独自のLMSでなく、だれにでもわかるセンチ表示が推奨されています)。
しかし、L、M、Sのボリューム表示だけの産地、品目も多くあります。つまり、大きいことは品質も優れ、小さいことは質も劣るというのが、切り花の考え方で、L、M、Sで品質をも含めた表示です(画像下)。
ここに日持ち保証の問題点があります。
今、日持ち保証をしようとしているのは、スーパーの花束の無人販売です。欧米のスーパーマーケットは、日持ち保証をしたので、切り花の売り上げが急激に伸びたという情報が背景にあります。スーパーの花、すなわちホームユースは、取り扱いやすい切り花の長さでお手ごろ価格、2LやLではありません。
ホームユースサイズであるMを日持ち保証するのは生産者にとってつらいことです。
日持ちにも誤解があります。日持ちを決定するのは、収穫後の取り扱いが3割、栽培環境、栽培技術で7割です。ハウスの中でじっくり同化養分を溜め込んだ花は、日持ちが長くなります。そのような花はボリュームも2Lになります。M、Sは、2Lをめざしたが、うまくいかずMやSになってしまった同化養分が少ない花です。
ここがユニクロと決定的に違うところです。
日持ち保証は意欲のある花屋さん、市場、それをサポートするマーケティングの人たちにより歩み始めていますが、欠けているのが、高品質なホームユースサイズ、Mを作る生産者です。持続可能な日持ち保証には、日持ちが長い切り花の生産が基本です。
それは、日本の優秀な生産者にとって、むつかしいことではありません。
問題は、Mを作った経営を成り立たせた事例がない、ということです。新しい品質、規格を提案し、成功させるには、生産者の熱き想いと手を携える市場の存在が不可欠です。