写真2 立ち枯れ病で枯れないカーネーション「花恋(かれん)ルージュ」(農研機構花き研究所育成)
それを60cmの短茎にして、年に5回収穫する技術を開発しました。植えつけてから60日で花を咲かせます。
しかし、400名もいるのに、現場で役立つ研究成果の数は多いとはいえません。原因の一つは、研究者と花づくり農家、農協、市場、仲卸、花店などとの交流、意見交換の不足です。
日本の花の研究者の数は世界一です。
大学に80名、国に40名、都道府県に280名、合計で400名もいます(宇田調べ)。
国民の腹を満たすわけでもない花をこんなに研究している国は日本だけです。
これらの人は農業の分野で花の研究にたずさわる研究者で、造園や植物園関係は含みません。
基礎研究(残念ながら農学にはノーベル賞はありませんが)から、農家がすぐに利用することができる実用的な研究まで、さまざまなレベルの研究が休むことなく、取り組まれています。
それら膨大な研究から、私が独断で選んだ2010年の夢ある新技術を紹介します。
(1)輪ギクの短茎60cmで年5回獲り(農研機構花き研究所、愛知県、愛知県経済連、鹿児島県の共同)
一般に輪ギクの切り花は80~90cmですが、仏花では60cmあれば十分です。
90cmでは年に、最大で2.5回しか収穫できません。
それを60cmの短茎にして、年に5回収穫する技術を開発しました。植えつけてから60日で花を咲かせます。
90cmでは、10a(1,000㎡)あたり10万本の収量ですが、60cmでは20万本収穫できます。
(2)小ギクを機械で一斉収穫(奈良県、香川県、沖縄県、兵庫県、みのる産業の共同)
切り花の生産で、もっとも時間がかかるのは収穫作業です。
花の収穫はハサミで切り取る手作業で、機械化は不可能と考えられていました。
それを奈良県の研究者と農業機械メーカーみのる産業は、小ギクを収穫する機械を開発し、特許をとりました。まず、沖縄のキクで実用化がはじまります。
この機械では、手作業の1/4の時間で収穫ができます。
ただし、花はばらばらに次々と咲いてきますので、それを一斉に咲かせる技術をも同時に開発しています。
(3)高品質のトルコギキョウを冬に咲かせる技術(農研機構花き研究所、広島県、熊本県、茨城県、福岡花き農協の共同)
トルコギキョウの1~2月の入荷量は、7~8月の1/4しかありません。消費者の要望に応えられていません。
そこで、冬にボリュームがある花を確実に咲かせる技術を開発しました。
その技術は、①大きな苗を植えつけ、②ハウスの昼間の温度を高く、夜の温度を低く、③電照をして、④生育初期に重点的に肥料を与える、ことです。
これにより、1年中、高品質なトルコギキョウを生産できるようになります。
(4)病気に強いカーネーション「花恋(かれん)ルージュ」を育成(農研機構花き研究所)
カーネーションの大敵は、「立ち枯れ病」という病気で株が枯れることです。
この病気には農薬が効きません。
病原菌は、かびと細菌ですが、オランダのような涼しい国は、かびによる立ち枯れ病しか発生しません。
細菌に強いカーネーションはオランダでは育成できません。
花き研究所の小野崎さんらは20年以上の研究の結果、枯れないカーネーション「花恋(かれん)ルージュ」を育成しました。「枯れん」と「花恋(かれん)」・・・。
日本は花づくりに適した気象環境とはいえません。
そんな日本で、世界一高品質な花を生産できているのは、農家の高い技術力と勤勉さ、その農家を支える400名の研究者の技術開発力です。
しかし、400名もいるのに、現場で役立つ研究成果の数は多いとはいえません。原因の一つは、研究者と花づくり農家、農協、市場、仲卸、花店などとの交流、意見交換の不足です。
研究者は花産業の苦況に目を向けてください。
花産業で働くみなさま、ことし1年お疲れ様でした。29日が止市、年明けの1月4日の初市まで、花いちばは休みになります。しかし、農家のみなさんは盆も正月もなく、花の栽培管理に追われ、花店のみなさまは年末のかき入れ時です。くれぐれも健康にご留意下さい。
年明けの1月18日は、NaniwaFEX in N.Y.です。なにわのベテラン営業社員がニューヨークで、日本の高品質な花を売りまくります。ご期待下さい。
みなさま、よいお年をお迎えください。