2009年1月22日木曜日

ピンチがチャンス②

前回、花産業は震災、金融恐慌、戦争など危機の時に大きく飛躍してきたことを説明しました。


ではこの度の経済不況によるピンチをどのようにして乗り切り、飛躍するか7つのポイントを紹介します。


1 解説、評論ではなく、できることから実行 

花の生産者、花屋さん、そして花市場で働く人々は、解説者、評論家ではありません。グラウンドでプレーしている現役のプレイヤーです。「消費を拡大する」、「高品質な花を作る」、「消費者ニーズにあった生産」などと言ってすませるのは解説者。プレイヤーはそれらを実現するために、具体的に行動しなければなりません。


2 花の消費者は誰?

野菜の消費者は国民そのものです。家庭で料理をして食べるか、レストランか、コンビニ弁当かの違いだけで、最終的には国民の胃袋に納まります。

花の消費は多様です。食卓の一輪のバラ、仏壇やお墓の花、記念日の贈り物、ホテルのロビー、結婚式場などさまざまです。産地の販売促進、消費拡大の活動が思ったほど成功しないのは、行政の人たちが花の消費者を野菜と同じと考えているからです。

生産者にとって消費者とは花屋さんです。生産者は意外とどんな花屋さんに買っていただいているのか知りません。

自分の興味がある品種を作り、咲いただけ、自分たちの規格で等級をつけて市場へ送る、自分の満足のために作っているようなものです。

お客さまは誰か、決まったお客がいるのかいないのか、その人たちが何を望んでいるかを知りましょう。そのためには、まず、市場の担当者へご連絡下さい。


3 営業なくして生産なし

生産者は「営業」が苦手です。
自由人、自由業ですから、貯金、共済の勧誘をする農協職員のような営業はできません。花が咲いた
ら市場へ送り、「欲しい人が買えばよい」、「誰が買うかなんて関係ない」でやってきました。しかし、これ
だけ花が溢れている現在は、お客さまに選んでいただく時代です。

でもいまさら営業なんて。

生産者と花屋さんの出会いの場ができました。

NaniwaFEX2009です。(写真は前回の様子です)



花屋さんからの要望、苦情を直に聞き、自分たちの想いを伝えてください。
出展されていない産地の方も、出荷市場に関係なく、とりあえず足を運んでみてください。


4 花に情報(付加価値)をつける

花を売るのは花屋さんです。
その花屋さんに役立つような情報を提供してください。それがその花の付加価値となります。日持ち保証やエコファーマーにとらわれず、産地ではあたりまえのことでも花屋さんには目新しい情報(付加価値)になります。

例えば、「夜、黄色い蛍光灯をつけて害虫がつかないようにしているカーネーション」、「油かすなど有機肥料で作ったバラ」、「この産地にしかないキクの品種」などです。

「寝室のスイートピーはその香りで夫婦の愛が高まる」なんてのもありです。


5 企画商品(付加価値)

産地と市場の共同作業の利点は商品化が早いことです。
昨年6月のNaniwaFEX2008で提案したフルブルームマム(写真)は、JA愛知みなみとなにわ花いちばとで、新しい輪ギクとして商品化されています。


産地ではさまざまなアイデアをお持ちですので、市場との共同作業で新しい商品を生みだすことができます。

6 すぐにできる選別の強化

品質がよい花を作ることは本当にむつかしいことです。ベテランの生産者ほど、「いつまでたっても1年生」と、よく言われています。花を作る技術の向上はむつかしくても、作った花の選別は今すぐできて、コストがかからず、売上げアップに直接つながる作業です。

等級を下げるかどうかで迷ったその1本が、残りの99本だけでなく、その生産者、さらには産地全体の評価を下げているのです。花が市場に着く前にネットで売れてしまう現在の流通は信用で成り立っています。

質の選別は人間の作業、欲がでるし、共選では人間関係をも悪化させます。それを克服した生産者、産地が信用を獲得しているのです。
毎日の作業である切り前、規格、束の仕方、箱詰めの方法など、市場の担当者と連絡を密にしてください。

「目先の小さな得が大きな損を生み、小さな損が大きな得になる」


7 コスト削減は生産履歴の記帳から 

重油価格が下がり、ほっと一息つけるようになりました。重油値上がりでよかったことは、暖房や生産コストを見直せたことでしょう。
ヒートポンプを入れなかったとしても、ボイラの清掃、サーモの点検、カーテンの隙間などでエネルギーの無駄をチェックできたのではないでしょうか。

生産コストの点検はいつでも必要です。
それには生産履歴の記帳です。

生産履歴の記帳は二つの点でこれから必要です。

ひとつは、説明したように生産コストの見直しのためです。

ふたつめは、こらからは花でも原産地表示が求められるようになります。

そのとき、安全・安心の観点から、どんな農薬を使ったか、どんな肥料をどれくらい使ったかの情報も説明できるようにしておかなければなりません。

このことは、消費者の要望とともに、生産者の経営や栽培技術の向上のためにおおいに役立ちます。



ピンチを嘆くより、一歩でも前進する、小さなことでも実行する、それでピンチをチャンスにチェンジしましょう。(Yes We can)